PLAYNOTE ポール・オースター『The New York Trilogy』

2005年01月15日

ポール・オースター『The New York Trilogy』

[読書] 2005/01/15 17:06

冬休みに読んだ。日本では『シティ・オブ・グラス』『幽霊たち』『鍵のかかった部屋』と別々の三冊で売られているけど、"Torilogy"(三部作)を一冊にまとめたペーパーバックで読んだ。すごくシンプルな英語でありながら詩情豊かで、時間はかかったけど楽しめたな。

どの作品もあらすじを書いたら平坦でちっとも面白くないので書かない。共通して言えるのは、舞台がニューヨークであることと、アイデンティティの動揺を描いているということ。メトロポリタンシティでアイデンティティを喪失していく主人公。ニューヨークを舞台に選んだ理由がよくわかる。

正直、作家としてはあまり好きではないかも。ばら撒くだけばら撒いて回収されない伏線・プロットは意図的にやっているんだろうけど、読後なんとなく食い足りなさを感じてしまう。「カフカ的な」なんて煽りをつけてる人もいた独特の不安定な世界観も、カフカを夜の散歩の最中ふと折れた角で見た悪夢とすれば、オースターは白昼夢。方向性も深さも違うと思う。

『鍵のかかった部屋』で、主人公が撞着した感情からファンショーを愛した人たちを次々奪っていくのはちょっと引き込まれた。頭蓋の中に常に存在する「鍵のかかった部屋」を追い払うためにファンショーを殺そうとし、探し出そうとし、忘れようとし、長い苦闘のはてに捨てることができた主人公の姿に三部作最後の救いがあるけれど、他の二作品のトーンは暗い。

日本語では『ムーンパレス』を読んだきりだけど、もうオースターはいいかな、という気がした。