PLAYNOTE ピンターを読んでるんだけど

2005年01月10日

ピンターを読んでるんだけど

[演劇メモ] 2005/01/10 12:00

ちっとも面白くない。

ピンターと言えば。戦後イギリス劇壇で最も有名な作家なわけで。不条理演劇にくくられることが多いけど、ウェルメイドな雰囲気もあったりして。戯曲の他に映画脚本やラジオドラマも一杯書いてるわけで。が、ちっとも面白くない。

イギリス来て「現代イギリス演劇」なんて講義とったのに、ピンター理解せず帰るのは癪だな、と思い、とりあえず五本くらい戯曲を一気読みして、映画版Homecomingも見て。それでもちっとも面白いと思えない。

ピンター戯曲は不条理演劇と呼ばれるものの中でも飛び抜けて不条理。時間も空間も定かではなく、人物も人間的でもなければメタファーとしても介しづらい。

ある映画感想のページにちらっと書かれていた言葉だけど、これより適切な形容を日本語で与えることは俺にはできそうにないので引用。「ピンターは不条理にどんな解釈も与えない。不条理を不条理として投げ出し、日常世界にひびを入れる。」ピンターはこれを意図して、というより、これが自然、当然というようなスタンスで書いている。ここに載ってる書簡のやり取りなんか、ピンターのスタンスを端的に言い表してる。

Pinter戯曲集『Plays: One』の序文より。

A play is not an essay, nor should a playwright under any exhortation damage the consistency of his characters by injecting a remedy or apology for their actions into the last act, simply because we have been brought up to expect, rain or sunshine, the last act 'resolution'. To supply an explicit moral tag to an evolving and compulsive dramatic image seems to be facile, impertinent and dishonest. Where this takes place it is not theatre but a crossword puzzle. The audience holds the paper. The play fills in the blanks. Everyone's happy.

だが俺は思うのだが、人生をトレーシングペーパーで写したものが戯曲だろうか? 人生や事件、感情や存在、時間・空間といったものが近代的価値観によって割り切れるほど秩序だっておらず、いやむしろ混沌としている、無意味で漠然としたものである、という点には異を唱えない。

「人生なんて偶然の連続で意味なんかないもんだよ。そこに意味を書き加えるのは個々人であって本来的に人の一生は混沌だ。」人生に意味を書き加えていかなければ人間は生きていけないように、戯曲とは混沌や不条理をトレースすることではなくそれに対し何らかの理解や解決を与えるもんじゃないか、と最近俺は強く思う。ピンターは確かにその人生観を戯曲に表しているけれど、芸術ってのは自然の暴威を鵜呑みにすることじゃない。と思う。

ピンターは「選択し配置する役割は私のものだ」と語っているから厳密には人生のトレーシングペーパーではないのかもしれない。が、暗転のタイミングやカーテンの降ろし方を計算するだけじゃなくて、もっと根源的な部分で創作することが戯曲家の仕事なんじゃないだろうか?

なんていろいろ書いたけど、要するにつまらん。なぜつまらないかを説明するのはなぜ面白いかを説明するのと同じくらい難しい。理屈を振り回すのが簡単なのに比べて、遥かに難しいことだ。うえーつまんねーよー。

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コメント

投稿者:美香 (2005年10月23日 16:12)

9つ戯曲を読みましたピンター。
邦訳で。
賛同します。
ええ、ピンターはつまらない。

投稿者:Kenichi Tani (2005年10月24日 02:38)

コメントありがとうございます。美香って2ch文学板のコテハンの美香さんですよね?こんなとこでお見かけするとは。

投稿者: (2009年04月29日 20:03)

ピンターおもしろいじゃないですか?
caretaker(だったっけ?)とか。
詳細わすれたけどおじいちゃんが態度を急変させるあたり最高。