PLAYNOTE デレク・ハートフィールドについて

2004年12月08日

デレク・ハートフィールドについて

[読書] 2004/12/08 18:34

いよいよ英語で小説を読んでみようと思う。戯曲や学術論文の類は死ぬほど読んだけど、小説はその情報量の多さとボキャブラリーの幅の広さ(木々の名前から家電メーカーまで登場するわけだから断然広い)から敬遠してた。

で、前から興味があったデレク・ハートフィールドを読んでみようと思った。村上春樹の『風の歌を聴け』(彼のデビュー作で、俺が一番好きな作品だ)で度々言及される作家だ。邦訳はあまり出版されてないらしいから、ここは一つ英語で…。

と思ったらすごい意外な事実に直面した。

『風の歌を聴け』で紹介されているデレク・ハートフィールドの肖像。はてなのキーワードより引用。

略伝

1909年、オハイオ州の小さな町に生まれ、そこで育った。父親は無口な電信技士、母親は星占いとクッキーを焼くのがうまい小太りな女だった。ハイスクール卒業後は郵便局に勤めるが長続きせず小説家を志す。1930年、5作目の小説が初めて売れて稿料を手にする。しかし、それから8年と2ヵ月後、1938年に彼の母が死んだ時、エンパイア・ステート・ビルの屋上から飛び降りて蛙のようにペシャンコになって死んだ。彼の小説は、「文章は読み辛く、ストーリーは出鱈目であり、テーマは稚拙だった」と評される。

文献

  • デレク・ハートフィールド「気分が良くて何が悪い?」(1936)
  • デレク・ハートフィールド「虹のまわりを一周半」(1937)
  • デレク・ハートフィールド「火星の井戸」
  • デレク・ハートフィールド「冒険児ウォルド」(全42編)
  • Thomas McClure; "The Legend of the Sterile Stars": 1968

『風の歌を聴け』ではここまで細かに言及されており、かつあとがきではアメリカにあるハートフィールドの墓を訪れた村上春樹の手短な旅行記が掲載されている。まさか架空の作家だとは思わなかった。

そう、架空の作家だったのだ。完全に騙された。"Derek Heartfield"で検索しても同姓同名の人が一人見つかるだけで、あとは全部春樹絡み。手が込んでいる。

春樹はこうまで書いている。

僕は文章についての多くをデレク・ハートフィールドに学んだ。殆んど全部、というべきかもしれない。

不幸なことにハートフィールド自身は全ての意味で不毛な作家であった。読めばわかる。文章は読み辛く、ストーリーは出鱈目であり、 テーマは稚拙だった。しかしそれにもかかわらず、彼は文章を武器として闘うことができる数少ない非凡な作家の一人でもあった。 ヘミングウェイ、フィツジェラルド、そういった彼の同時代人の作家に伍しても、ハートフィールドのその戦闘的な姿勢は決して劣るものではないだろう、と僕は思う。

ただ残念なことに彼ハードフィールドには最後まで自分の闘う相手の姿を明確に捉えることはできなかった。

結局のところ、不毛であるということはそういったものなのだ。

こんな作家読みたいに決まってるじゃねーか。

あまりにも言及される作家像が春樹本人に近いから、気がついてみれば不自然ではあるんだけど、それだけ多く影響を受けたんだろう程度で済ませていた…。春樹め。

さて何を読もう? フィッツジェラルドは好きじゃないし、ヘミングウェイは長い上に退屈そうだし…。ポール・オースターとかどうかな? おすすめある方は教えて下さい。

リンク: papativa.jp: 村上春樹と庄司薫の一致
メタ小説として『風の歌を聴け』を読み解きながら、村上春樹が庄司薫から受けた影響を考察しています。ブログでこんなクオリティ高い文章書いてる人がいるのか、驚いた。必読です。

コメント

投稿者:**** (2004年12月08日 23:01)

村上春樹ルーツならフィッツジェラルドはやはりおもしろいよ。
ギャッツビーと金持ちの青年はおすすめ。
あと、レイモンド・カーヴァーですか。これもよい。
レイモンド・チャンドラーもよろしいんじゃなくって。

>不幸なことにハートフィールド自身は全ての意味で不毛な作家であった。

存在も架空だからまさしく不毛だわ。

投稿者:Kenichi Tani (2004年12月09日 13:43)

フィッツジェラルドはギャッツビーしか読んでないけど確かに面白かったな。レイモンド・カーヴァーは最近いろんなとこで名前きくから今度なめてみようかな。

結局ポール・オースター読んでるんだけど超おもしろい!今日は久々にハイだ。五日ぶりくらいに厚い灰色雲の去った秋晴れのカンタベリー、なかなかファインだぜ。

投稿者:Kenichi Tani (2004年12月09日 13:43)

ピーエス ふだん英米の作家って読まないから参考になったよ、ありがとん。

投稿者:ゆらのすけ (2004年12月10日 23:14)

庄司薫ファンなので、「あーーーーー!!!!!」と朝から叫んでしまいました。

投稿者:**** (2004年12月12日 01:29)

>リンク: papativa.jp: 村上春樹と庄司薫の一致

へぇ。
「ねじまき鳥クロニクル」を読み解く、みたいな本も
暗号解析みたく村上テキストを分析してたね。

カーヴァーは短編だしよろしいんじゃなくって。

投稿者:kazz (2005年02月02日 13:03)

村上春樹の小説にカートヴォネガットという作家も良く出てきますよね、こちらは実在してるようです。

投稿者:Kenichi Tani (2005年02月02日 13:22)

春樹は大概読んだつもりだったけど、カートヴォネガットは知りませんでした。今度読むとき探してみます。

投稿者:かず (2005年07月11日 22:39)

Mr. Kenichi Tani

はじめまして。
先程、村上春樹著「風の歌を聴け」を読み終わり、デレク・ハートフィールドについて調べていたら当サイトを発見。中身を読んで驚愕しました。架空の作家だったとは・・・。

架空の作家だんたんだぁ~。
架空の作家か~。
架空の作家ねぇ~。

架空の作家という事実を前提で、デレク・ハートフィールドについて記されている箇所を読めば読むほど、とても不思議な感覚にとらわれます。

投稿者: (2005年09月21日 10:15)

ハートフィールドの元になっているのはたぶんダグラス・アダムスのことですよ。もちろんJはジェイ・ギャツビー。鼠は…

投稿者:to seii (2006年03月27日 17:09)

だまされました。デレク・ハートフィールドという人物は架空なものだ!でもすできでした。

投稿者:Teddy (2006年04月08日 10:23)

最近出た本で『村上春樹の隣には三島由紀夫がいつもいる』はとても面白いです。一気に読めて、再度三島や漱石や村上を読みたくなります。
あと、もうこういう情報は飽き飽きかもしれないですけど、
オースターの"New York Trilogy"は傑作です。怖いです。
アービングも是非是非。

投稿者:カズヒロ (2006年06月14日 23:10)

いやーだまされましたねw
紀伊国屋の店員に悪いことしましたm(__)m

お勧めはレイ・ブラットベリの「火星年代記」でしょうか
ハートフィールドを探してて行き着いた作品ですw