PLAYNOTE National Theatre『Stuff Happens』

2004年10月23日

National Theatre『Stuff Happens』

[演劇レビュー] 2004/10/23 14:00

戯曲は随分楽しんで読めたものの、舞台の出来は惨憺たるものでした。

何が悪かったのか。一言で言えば、

「それを演劇でやる意味があるのか?」

これに尽きる。映画でもテレビでも朗読会でも何でもいいじゃん。始終テキストにおんぶにだっこで、劇化に伴う面白みがちっとも感じられなかった。

この芝居、911テロ以来の数年間をブッシュやブレア、ラムズフェルドやパウエルなど関係者各者の発言を台詞としてそのまま用いながら一気に追い駆ける…という内容で、ナレーションと役者の台詞が交互に挿入される。例を挙げるとこんな感じ。

ある役者「大統領自身も、この悪の『悪の枢軸』という表現についてこう述懐している」
ブッシュ「ちょっと反響があったみたいだね」
ある役者「一斉にヨーロッパ各都市に警鐘が鳴り響いた。フランス外務大臣はこのスピーチをこう呼んだ」
仏外相「単純に過ぎる」
ある役者「イギリスの外交官はこう述べた」
英外交官「あまりに未熟な表現で、私達みな笑ってしまったよ。まるでロード・オブ・ザ・リングさながらじゃないか」
ある役者「イラクの副大統領はこうコメントした」
副大統領「ブッシュ大統領のこの発言は、stupid だ」

これって演劇の言語じゃないわけだよね。「これに対しリチャード三世は怒りを抑えてこう言った」とか「Kは後にこの体験についてこう述べている」とか、そんなん普通ないわけで、この特徴的と言えば特徴的、不自然と言えば不自然な戯曲をどう劇化するかに興味があったんだけど…。

普通にそのまま読んでました。「ある役者」がすたすた前に歩み出てナレーションを入れると、間髪開けずにブッシュやらブレアやらが出て来て台詞を朗読して、また別の「ある役者」が歩み出てナレーションを加える…という。そのまんま。朗読会と変わらないじゃないか。芝居じゃないよ。

ずっとこの調子で他に創意も見られない。アナン国連事務総長が喋るときには国連のマークが背景のホリゾント幕に映写されたりして、馬鹿馬鹿しいったらありゃしない。淡々と進む中ラストのイラク人の悲痛な叫びは一瞬会場全体の心を貫いたけど、他は何も劇的なシーンはなく。ずーっと会話、会話、会話、朗読劇と変わらない演出。

これを演劇でやる意味があるのか? 部屋で読書と変わらない。あまりに退屈で寝ました。木戸銭払って睡眠をとるのはイギリス来て初。ざんねーん。

(余談: 劇としては散々だったけど、役者の物真似には感心した。ブレアやブッシュの特徴的なアクセントは俺でも聞き覚えがあるものだったし、イスラエル人が出て来たらイスラエル訛り、イラク人はイラク訛りと、ああ、イギリス人ってのはこんなにつぶさにアクセントを観察してるのかとちょっとびっくり。また、こっちの人の風刺・皮肉・あてこすり好きを再確認しました)

コメント

投稿者:奈美 (2004年10月24日 13:50)

あちゃー、ダメだったですか・・残念。
ってか、そんなにナレーション一筋の演劇・・って初めて聞いた。
ある意味でとても気になるけれど。。(笑)
お疲れ様です。

投稿者:**** (2004年10月24日 16:18)

>これって演劇の言語じゃないわけだよね

この言葉、すんなり入ったよ。
わかりやすいレビューだった。

投稿者:Kenichi Tani (2004年10月24日 19:09)

>奈美さん
ナレーション一筋、まで行かないかな。ナレーション四割、みたいな感じで。見せ方が下手くそなだけで、面白く、演劇的にスリリングに上演することもできたはずなのになぁ。戯曲は(俺のノロノロしたスピードで読んでも)スリリングだったんだから。

>****くん
おぅ、まさかお前が劇レビューまで読んでるとは思わなんだ。帰国したら飲み行こう。当然君のおごりで。