PLAYNOTE 聖史劇『The Creation』

2004年08月20日

聖史劇『The Creation』

[演劇レビュー] 2004/08/20 01:22
カンタベリー大聖堂外観
大聖堂の荘厳な外観

イギリス国教会の総本山、イギリスで最も由緒ある教会であるカンタベリー大聖堂の構内で芝居をやるという。しかも演目は中世聖史劇の復活上演。滅多に観れるものじゃない。これを見逃す手はないぜ。

二部構成の一本目、世界の創造からキリストの誕生までを描く『The Creation』を観て来た。

まずちょっと演劇史の解説。聖史劇とは中世ヨーロッパで流行した演劇の一つ。職人たちが素人俳優として出演し、ページェントと呼ばれる屋台みたいな移動舞台を引っ張って街中を練り歩きながら、聖書のエピソードを題材に演じた芝居。「芝居=嘘、神の冒涜だ!」と清教徒の批判にあってだんだん勢いが衰え、伝統は一度途絶えた。基本的に今上演されているものは復活上演、再現モノです。

(詳しい説明: 中世宗教劇

久々に入るカンタベリー大聖堂。威風堂々・荘厳華麗、やっぱりすごい建物だなーとため息が出る美しさ。ここで芝居をやるってだけでわくわくしてしまう。

神とアダムにそれぞれちょっとした人気俳優を起用している以外は基本的に無名の役者か素人さん。こう書くとダメっぽい感じがするけど、いや、実に面白かった! 聖書が題材とは言え堅苦しさはまったくなく、始終笑いに包まれた舞台。うん、中世の聖史劇も職人たちがあーだこーだ言いながら楽しんで演じてたんだから、きっとこの雰囲気に近いはず。

演出家は別段有名な人ではないが、劇的効果というものをよくわかっていらっしゃる。大聖堂の広い空間を活用し、左を見ていたと思えば右で事件が起こり、壮麗なステンドグラスや内部装飾を最大限に舞台効果に結びつけながら、うまいところで子役を出し(子役はやはり卑怯なくらい人目を引く)、見立てをうまく使った小道具・舞台で笑いをとったり、象徴に見せたり。手練を感じた。

もう、役者とか下手だし、自分の役が終わったあと普通に客席にいたりその辺うろうろしてたりして普通だったらぶち壊しなんだけど、それが逆に陽気で牧歌的で家族的な雰囲気を醸し出している。何とも言えずあったかなムード。衣装もおとぎ話の柔らかさと聖書の神々しさをちょうどうまくブレンドした感じでセンスいい。民族舞踊や聖歌もきちんと折り目節目で挿入して、とにかく楽しい舞台。微笑ましいことこの上なし。

シーンごとに別の場所で上演されるので、大聖堂内をあちこち移動しながらの観劇。これがまた普段の観劇とは違う感触で何とも楽しい。次はあっちでノアの方舟を見て、その後こっちでアブラハムを見て、今度はそっちでモーセの十戒を見て。移動するたび驚きがあり、存分に大聖堂の広大な敷地を味わい尽くせる。ページェントも観てみたいけど、大聖堂のあるカンタベリーでやるならこれがベスト!

楽しい、楽しいを連呼しているけど、本当に楽しめた。演出家、本当にうまい。お客さんのムードもいい。もっとも原始的な発生段階の演劇って、儀式的なものかこういう家族的なものかどっちかだったろうと思う。そういう意味で、演劇の楽しさの原点を見た気がする。

…いないと思うけど、カンタベリーに来るよという人、カンタベリーにいるよという人、見なきゃ損です。聖史劇の復活上演自体観れることが稀、その上これはよくできています。家族連れでもカップルでも友達同士でも。観ろ。

学生は当日券5ポンドで観れます。立ち観と言われるけど座れます。学生証なんか確認しないので若作りすれば誰でも5ポンドで観れます。ホントおすすめです。

来週第二部である『The Passion』を観に行きます。