PLAYNOTE グローブ座『Measure for Measure』

2004年07月17日

グローブ座『Measure for Measure』

[演劇レビュー] 2004/07/17 14:00
舞台写真
イザベラと公爵

邦題は『尺には尺を』。日本ではマイナーだが、ハムレットと並ぶ「問題劇」として数々の評論家および演出家の意欲を掻き立ててきた作品。

あらすじ。公爵の留守をあずかったアンジェロは、公明正大、謹厳実直で知られる高徳の士。ウィーンの風俗の乱れを嘆き、眠っていた法律を19年ぶりに執行する。捕らえられたのはクローディオ。罪状は、婚前交渉!

修道院に入る手続きの最中だったクローディオの妹・イザベラは、知らせを聞き兄の命乞いのためにアンジェロの前にひざまずく。はじめは軽くあしらっていたアンジェロだったが、若く美しい敬虔なイザベラを見ているうちに、一つ、彼自身ですら予想だにしなかった願望が鎌首をもたげる。

そしてアンジェロは、必死に嘆願を続けるイザベラに対しこう言い放つ。

「兄の命を救いたければ、お前の処女の操を私に差し出せ」

問題劇と呼ばれる所以である。シェイクスピアも出来ちゃった結婚だから、何か思い入れでもあったんだろうかと下衆な勘ぐりをしたくなる。ピューリタンの勢いも増す17世紀初頭にこんな芝居を書いていたとは、シェイクスピアあっぱれである。

演出はオールドファッションでオーソドックス。中世風の衣装に簡素な舞台、楽隊の生演奏や牧歌的なダンスも加わり楽しい舞台。

ルーシオ・ポンピーをはじめとする喜劇キャラと身をやつした公爵を中心にドカドカ笑いを取り、劇場は始終笑いに包まれいい雰囲気。グローブ座はやっぱり雰囲気がいいな。ロンドンに来たら是非立ち寄ることをおすすめします。

「許しの劇」の面目躍如とも言える円満ハッピーエンドに至る楽しい劇の物陰に、この劇の近代的な主題、性と理性の問題が見え隠れ。アンジェロの造型は見事。はじめはまゆ一つ動かさぬ演技でアンドロイドのようだったアンジェロが、イザベラへの劣情に気づき、混乱し、迷い、激昂し、そして後悔し、次第次第に人間らしくなっていく様が大変よかった。問題の一夜の後の独白、あのときの呆然とした表情が印象的。ヤリたくてヤリたくてあれこれ努力してようやく手に入れたけどしてみたら意外とどうってことなくてシラけちまった翌朝の顔、とでも言えば近いだろうか。余計わかんないか。

駄目だった点。イザベラはもっと若く美しくないと。アンジェロを引きずり落としたのは敬虔な信仰心と美徳だけでなく、若い肉体だったはず。演出は完全に愛と美徳の勝利みたいに描かれていてちょっと楽天的にも思えたけど、まぁこういう方向性もアリだと思う。面白かったし。

いやー楽しかったー、と晴れ晴れした気分で劇場を出た。

コメント

投稿者:奈美 (2004年09月02日 07:58)

こんにちは、初めまして。(もしかしたらコメントした事あるかも・・あ・ないか。すみません記憶が飛び気味で・・)
と、何だかいきなりとんでもない事、言い始めちゃってすみません。
ケント在住の演劇大好き人間としては、このサイト様はもう”凄い!!!”の一言につきます。
何かもう、先を越された!しかもレベル高すぎ!!みたいな・・
って、自己紹介が遅くなり申し訳ありません。奈美といいます。

昨日グローブ座に久々に(2ヶ月間夏休みで日本に帰省してました)行きまして、”Measure for Measure"を見てからこのサイト様のレビューを読んでぜひぜひ私もコメントしたくなって書いてしまった所存です。
実は私も最初、イザベラが出てきた時に、”もうちっと若くて魅力的のが良かったんじゃない?”
と、思ったのですが、見てるウチに、見た目とは違う純粋な魅力に圧倒され始めてしまい、”まぁ、こんなんもいっかな”って感じで・・・
後、ラストシーンのアンジェロのヒクッと引きつった顔→”エ?ハイ?”な困惑面から徐々にファイナルジグ(ダンス)で見せた笑顔へのつながりが凄い好きでした。
まぁ、ひたすらリアム・ブレナンファンをやってるせいかもしれないんですけど(笑)
相変わらず、マーク・ライランスは凄いし・・・
そんでもって、谷さんのレビュー、為になりました。
アンジェロの造形の事とか・・
ところで、”Measure for Measure"、BBCFOURでこの土曜に生中継するそうですよ。
私は、姉ん家にスカイが入ってるのでビデオ片手に押し込む予定です。(笑)

それと「演劇界には困った人が多いスレ」の話を読んでビクビクしてました。
え、ゆ・夢を追ってる・・なんてのはもう古い?(笑)
確かに、演劇やってます。って初対面の人に面と向かって言うの恥ずかしいですよね
将来どうすんの?とか聞かれても「あー、えっとウェスト・エンドで働きたいなぁ」
とか。(大半の友人には意味合いが伝わらないので良いんだろうけどさ(苦笑)

それでは、何か無茶苦茶な事を書き込みまくりましてすみません。 失礼します。
奈美

投稿者:奈美 (2004年09月02日 07:59)

って、本当に長いなぁ・・(苦笑)すみません。
コメント、分ければよかったですね。

投稿者:Kenichi Tani (2004年09月09日 03:11)

旅行いってたので返事が遅くなりました、ごめんなさい。

ケント在住なんですか!びっくり。しかも演劇好きって奇遇ですねー。アンジェロは光ってましたよね、この芝居。ラストのジグへのつなぎ方は僕も好きです。戯曲では終始無言のイザベラもうまく舞台に巻き込んでハッピーエンドにがっと持って行く。新聞の劇評とかは散々だったけど、いい芝居だったと思います。

僕の部屋はビデオはおろかテレビすらないので一切劇場中継は見れません…残念。

奈美さんもあのスレ読んでギクリとしたクチですか。お互いひっそり生きていきましょう。