2004年07月19日
ハムレットの気持ち
ハムレットが何であんなんなっちゃったのかちょっと考えてみよう。
(ここから先、なんか当然みたいなことを今さらのように書き連ねるけれど、個人的なまとめなので勘弁して下さい)
ハムレットの登場人物をざっと眺めてみると、皆が皆ハムレットを裏切っていることに気づく。例外は先王とホレイショー、そしてオフィーリア。この三人を除いてほぼ全員がハムレットを裏切っている。
まず母が裏切る。父の死から二ヶ月と経たないうちに新たな夫を床に迎える母。ハムレットにとっての父は、ヘラクレスと並んで崇敬の対象。その父をあっという間に忘れ、別の男を床に迎えた母に、ハムレットは汚らわしい淫奔を感じる。母の淫乱が父との思い出を捨て、名誉すらかなぐり捨てて新たな相手を求めたのだ。
これがオフィーリアの拒絶に繋がっていることは言うまでもない。父を失い、ウィッテンバーグから帰国して一人悲しみに暮れるハムレットに慰めを与えたオフィーリア。オフィーリアはハムレットを裏切ってはいない、だがこの時点でハムレットは彼女との間に柵を打つ。
「弱き者、汝の名は女!」
「尼寺へ行け! お前の美しさは、お前の貞淑を淫奔に変えてしまう。尼寺へ行け!」
オフィーリアと肉体関係があったと仮定すれば、よりいっそうこの台詞は際立つ。
叔父が裏切る。王の中の王、地上の星であった父を殺し、王冠と母を奪った。ポローニアスが裏切る。旧知の仲だったギルデンスターンとローゼンクランツが裏切る。ハムレット暗殺の国書を運んだのは彼らだ。武人として尊敬の念すら抱いていたレアティーズも裏切る。卑怯にも試合用の剣に毒を塗り、ハムレット暗殺を企てた。
再婚によってハムレットを裏切った母に、ハムレットは再度疑惑の目を向ける。父が死んだから再婚したのではなく、叔父と結婚するために暗殺を共謀したのではないか? 疑念がハムレットの頭を支配する(疑念はおそらくポローニアスや廷臣たちの身にも及んだだろう。まさか彼らも叔父にそそのかされたのでは?)。
オフィーリアは気が狂って自殺する。汚れなき魂はこうしてかくも惨めに破滅し、自殺であるためにぞんざいな葬儀しか行われない。ホレイショーを除いて、世界は完全に彼を背を向けた。淫奔のために美徳を売った母と、正義と秩序の象徴であった父のあまりにもあっけない死。
「この世の間接が外れたのだ」
ずいぶん冒頭の台詞だが、まさにこの気持ちだろう。振り返ってみると、本当にハムレットは孤独だ。どこまでも孤独だ。そして友人から親族、臣下まですべての人間に対し疑念を抱いている。女も男も信じられぬ。
世界全体への不信感に胸中を侵されたまま、毒に意識が遠くなる。そして、あとは沈黙。
(シェイクスピアの人間不信、ここに極まれり)
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