PLAYNOTE 安部公房『箱男』(新潮文庫)

2004年02月04日

安部公房『箱男』(新潮文庫)

[読書] 2004/02/04 16:24
トランペット吹き
※画像は本文と一切関係ありません。

ネットで安部公房+箱男で検索すると評論じみたものが沢山乗っていて、素直な感想が少ないことに気づく。まぁ映画のパンフレットを読むくらいの面白さは得られるが、感想が読みたい。実験小説を読んだからって難しいこと書かなくたっていいんじゃないの? と思う。

率直な感想。安部公房の作品をまともに読むのははじめてだったが、正直、読後、混乱した。別に話の筋に関してではなく、何かこう、文章が体験したことのない手触りをしていたので、どう言葉で表現していいのかわからない。この感覚はすごく好きだ。

けど話の筋立てにぞくぞくしたりはしなかった。俺が小説に求めてるのはそういうぞくぞくなのだが、それがなかったため読んでいてちょっとつらかったのは事実。あちこちで斬新だの革新的だの言われてるが、プロット自体はさほど斬新でもないような。まぁ2004年に読んでいるってことを差っ引いて考えなくちゃいけないんだろうけど。

でも、文章にはかなりぞくぞくした。例えば。

「指の二、三本切り取られても、故障がききすぎたウインナ・ソーセージをかじっているくらいにしか感じないだろう。とつぜん、もう一度、ぼくの呼吸が大きく変化する。ざらつき、小刻みになり、猫のように喉を鳴らして、ぷっつり切れる。夢の中では、発行する無数のアーチで構成された、影のない都市の入り口に立っている。」(p158)

「小さなものを見つめていると、生きていてもいいと思う。」(p165)

「ナイフで皮をむかれていく果物の白さが、まぶしいように目先にちらつく。ぼくは、イチジクの皮をめくるように、箱ごと自分の皮膚をひんむいてしまいたいと何度も思ったほどである。」(p170)

一流の小説家は常に一流の詩人であるが、安部公房は紛れもなく一流の詩人だ。気軽に読める作品ではないが、だからこそ楽しめた。他も読んでみよう。

(余談。最後の方で凄まじい既読感を感じた。どこかでこんな印象の文章を読んだ気が……鴻上尚史だ! 事実鴻上尚史は安部公房の大ファンで、戯曲『幽霊』を演出したりしてる。最後の方の打ちひしがれたロマンチシズムみたいなものに、鴻上尚史の戯曲のラスト間際の空気を感じた。)

参考:アマゾンの書評

コメント

投稿者:砂野 (2007年04月27日 23:22)

はじめまして。
箱男の謎をすっかり解きましたのでごらんください。
http://homepage1.nifty.com/sunano/hako.htm
推理小説以外の面白さが減るわけではありません。